薬剤師の職場といえば、病院や薬局、ドラッグストアを思い浮かべますよね。
近年では、インターネットによる第一類医薬品の販売が解禁となり、医薬品のネット販売にかかわる仕事をしている薬剤師もいます。
インターネット通販大手のAmazonでも2017年に医薬品のネット販売を開始しており、現在も薬剤師の求人が出ています。
Amazonで働く薬剤師はどんな働き方をしているのでしょうか。
この記事では、Amazonの薬剤師の業務内容や年収、待遇について解説します。
ドラッグストア薬剤師として働くメリット・デメリット、向いている人、向いていない人(調剤薬局や病院の方がおすすめ)についてこちらの記事で説明していますので併せてごらんください。
Amazon薬剤師の年収
Amazonの薬剤師の年収は、500〜800万円となっています。
能力、資格、経歴、経験などによって面接後に決定されます。
他の大手ドラッグストアと比較すると、Amazonの薬剤師の年収はやや高めに設定されていますが、月70時間の時間外労働手当、深夜勤務手当、法定休日勤務手当を含むことに注意が必要です。
月70時間の時間外労働手当を含むということは、1日あたり約3時間までの残業には残業代がつかないということです。
実際にどのくらいの時間外労働が発生するかはわかりませんが、残業をしても残業代がつかないということを考慮すると、Amazonの薬剤師の年収は高いとはいえないでしょう。
大手ドラッグストア | 年収相場 |
---|---|
マツモトキヨシ | 450万円~1100万円 |
クスリのアオキ | 600万円~800万円 |
Amazon | 500万円~800万円 |
イオン | 425万円〜798万円 |
ウエルシア | 600万円~750万円 |
コストコ | 600万円~720万円 |
コスモス薬品 | 550万円~700万円 |
ツルハドラッグ | 480万円~700万円 |
スギ薬局 | 700万円 |
クリエイトSD | 500万円~650万円 |
カワチ薬品 | 470万円~630万円 |
サンドラッグ | 606万円 |
ココカラファイン | 430万円~550万円 |
Amazon薬剤師の業務内容
Amazonの薬剤師の業務内容についてみていきましょう。
募集要項には、Amazonの社員として求められる役割(チームとしての職責)とAmazonの薬剤師として求められる役割(Pharmasistとしての職責)について明記されています。
チームとしての職責
- チームとしての職責には以下のように記載されています。
- Customerへの正しい情報提供と適正販売を行う
- Amazon.co.jp上の医薬品商品説明に責任を持つ
- 医薬品、医療機器等の出荷業務を確認する
- 物流センターにおける安全および衛生に関する助言および安全衛生活動を実施する
参照:Amazon 募集要項
販売している商品についての正しい情報提供を行うことや物流が適切に行われるように努めることが求められています。
医薬品の物流にかかわる業務は、ネット販売を行っているAmazonならではの業務です。
Pharmacistとしての職責
Pharmacistとしての職責には以下のように記載されています。
- 薬機法関連法規の遵守
- 問い合わせが合ったお客様の症状により、お客様の求めている医薬品の服用可否の判断を行う
- 医薬品を適正に使用するための服薬指導、情報提供を実施する
- 医薬品の購入者ごとに提供すべき情報の範囲を判断する
- 医薬品の購入者から、医薬品副作用の苦情や相談を受け付ける
- 一般用医薬品で対応できないと判断した場合、医療機関への受診を勧める
- コミュニケーションを通じ、副作用相談など、購入者のアフターケアを実施する
- 必要に応じてPMDAへの報告を実施する
参照:Amazon 募集要項
薬剤師として求められる職責は、薬局やドラッグストアで働く薬剤師と変わりありません。
薬局やドラッグストアではこれらの業務を対面で行うのに対し、Amazonの薬剤師は電話やメールなどで行います。
業務の割合
募集要項には、Amazonの薬剤師の業務割合についても明記されています。
- 50% 医薬品に関するプロジェクトにおいて医薬品適正販売の判断
- 40% Customerとのコミュニケーション
- 10% CSチームとのCustomer対応に関するコミュニケーション
参照:Amazon 募集要項
医薬品の適正販売の判断とCustomerとのコミュニケーションが業務の大部分を占めています。
医薬品の注文が入った際にお客様の情報を確認したうえで販売の可否を判断することと、お客様からの相談や問い合わせに対応することが業務の中心です。
Amazonの第一類医薬品の販売の流れ
Amazonの第一類医薬品販売の流れは以下のようになっています。
- お客様が「ご使用者状態チェック」に回答する
- お客様が薬の説明を確認したうえで注文する(この時点では注文は確定していない)
- 薬剤師が適正使用の確認をして注文を確定させる
- 商品を発送する
Amazonで第一類医薬品を購入する際、購入希望者は「ご使用者状態チェック」に回答しなければなりません。
「ご使用者状態チェック」は「名前」「性別」「症状」「アレルギーや副作用の経験」「現在治療中の病気、使用している医薬品の有無」「今回購入する医薬品の使用の有無」「確認したいこと」 といった内容で構成されています。
内容としては、薬局やドラッグストアで働く薬剤師が薬を販売する際に確認する項目と同じです。
Amazonの薬剤師は、第一類医薬品を注文したお客様が回答した「ご使用者状態チェック」を確認した上で、医薬品の販売が適正かどうか判断しています。
薬剤師が医薬品の販売が適正でないと判断した場合は注文がキャンセルになることもあるようです。
Amazon薬剤師の労働環境
実際に働く上で重要な勤務時間や職場の様子はどのようになっているのでしょうか。
勤務時間と休日数
Amazonでは、24時間いつでも第一類医薬品を注文することができますが、Amazonの薬剤師の勤務時間は9:00〜18:00です。
時間外の注文については、おそらく翌日の勤務時間に確認して注文を確定させていると思われます。
年中無休ですが、複数の薬剤師が在籍しており、シフト制の勤務です。
Amazonの一般用医薬品、動物用医薬品に関する表示では薬剤師の勤務シフトも公表されており、毎日10名前後の薬剤師が勤務していることがわかります。
年間休日は120日程度です。大手ドラッグストアと比較すると休日数は多い方といえるでしょう。
参照:各企業の募集要項
勤務地
Amazonでは、「アマゾンファーマシー」という有形店舗を登録しており、現在東京都江東区と大阪府東大阪市に店舗があります。
現在募集されている求人の勤務地もこの2か所です。
医薬品のネット販売は「有形店舗が運営すること」が前提とされています。
- 週に30時間以上を目安に運営すること
- 容易に出入りできる構造であること
- 実際に陳列されている商品をネットショップで販売すること
といった条件があります。
一般用医薬品、動物用医薬品に関する表示の中には店舗の写真が掲載されていますが、陳列棚には最低限の商品しかありません。
法律上、実店舗での販売もできるはずですが、物流センターを介したネット販売がメインだと考えられます。
Amazon薬剤師の福利厚生
Amazon薬剤師の福利厚生は以下のとおりです。
- 通勤交通費支給
- 社会保険完備
- 団体生命保険
- 確定拠出年金
- 社員割引制度
- 会員制福利厚生制度
- ファミリーデー、ハロウィンパーティーなどのイベント
Amazonの福利厚生は、他の大手ドラッグストアと同様に充実しています。
社員割引制度により、Amazonで取り扱っている商品を社員価格で購入することができます。
ネットショッピングをよく利用する人にとっては嬉しい福利厚生です。
Amazonで薬剤師として働くための条件
Amazonの薬剤師として働くためにはいくつかの条件があるようです。
基本条件、歓迎条件として募集要項に明記されています。
基本条件
Amazonの薬剤師として働くための基本条件は以下のとおりです。
- Bachelor(学士)以上の学位
- 薬剤師免許を有していること
- 薬剤師としての業務経験1年以上
- 対人販売(患者、顧客対応)の経験が1年以上
参照:Amazon 募集要項
Amazonで働くための基本条件として、1年以上の業務経験が求められるのが特徴的です。
Amazonには他の大手ドラッグストアのような教育制度はないため、即戦力となる人材が求められています。
歓迎条件
Amazonの薬剤師として働くための歓迎条件は以下のとおりです。
- 社内他部署との業務対応経験
- 電話対応しながら、サイト内で調査や、記録をする程度のPCスキル
- ドラッグストア・コールセンターでの経験
- 英語力(読み書き・会話)
- インクルーシブなカルチャーへの貢献や多様性に富んだグループで働くことに対して前向きであること
参照:Amazon 募集要項
薬剤師としての仕事において、コールセンターでの経験が評価されるのは珍しいです。
医薬品のネット販売を中心に行うAmazonならではの条件といえるでしょう。
また、Amazonは外資系の企業であるため、英語のスキルがある人が歓迎されるようです。
お客様のやり取りで英語を使う場面があるというよりは、社内のやり取りに必要なのではないかと考えられます。
Amazonの薬剤師として働く方法
Amazonの薬剤師の求人は、薬剤師転職サイトで検索してもヒットしません。
Amazonの薬剤師の求人を探す方法は以下のとおりです。
- Amazonの採用情報をチェックする
- マイナビ薬剤師に登録する
Amazonの求人情報は、公式の採用情報ページにまとめられています。
「薬剤師」で検索をすると、求人を確認できます。
また、マイナビ薬剤師に登録するのも選択肢のひとつです。
マイナビ薬剤師にAmazonの求人は出ていませんが、マイナビが運営している一般向けの転職サイト「マイナビ転職エージェントサーチ」では、Amazonの他職種の求人が掲載されています。
マイナビ薬剤師に登録して、担当アドバイザーに「Amazonで働きたい」と相談すれば、求人を紹介してくれるかもしれません。
まとめ
この記事では、Amazonの薬剤師の業務内容や年収、待遇について解説しました。
Amazonの薬剤師は年中無休ではあるものの、シフトがきちんと決められており、福利厚生も充実しているため、条件が合えば働きやすい職場といえます。
医薬品のネット販売は、比較的新しい制度であるため、今の時点では薬剤師の勤務先としては少数派です。
しかしながら、需要はどんどん高まっており、今後Amazonのようなインターネット通販サイトを運営する企業で働く薬剤師も増えてくるかもしれません。
現時点でのAmazonの薬剤師への転職は、ドラッグストアや調剤薬局への転職に比べるとかなり難しいですが、薬剤師の新しい働き方が気になる方は選択肢のひとつにいれてもいいでしょう。
よくある質問
Amazon薬剤師の年収は?
Amazonの薬剤師の年収は、500〜800万円となっています。
能力、資格、経歴、経験などによって面接後に決定されます。
他の大手ドラッグストアと比較すると、Amazonの薬剤師の年収はやや高めに設定されていますが、月70時間の時間外労働手当、深夜勤務手当、法定休日勤務手当を含むことに注意が必要です。
月70時間の時間外労働手当を含むということは、1日あたり約3時間までの残業には残業代がつかないということです。
実際にどのくらいの時間外労働が発生するかはわかりませんが、残業をしても残業代がつかないということを考慮すると、Amazonの薬剤師の年収は高いとはいえないでしょう。