病院薬剤師の年収はなぜ低いのに人気?仕事内容・メリット・デメリット徹底解説

病院薬剤師の年収はなぜ低いのに人気?仕事内容・メリット・デメリット徹底解説 病院薬剤師
病院薬剤師

新卒の薬剤師にも人気の就職先である病院薬剤師。

薬剤師としてより専門性が求められる仕事をしたい、チーム医療に参加したいと考え、病院薬剤師への転職を希望する人も多いのではないでしょうか。

薬剤師に人気の就職先である病院ですが、調剤薬局やドラッグストアなどに比べると一般的に年収は低いです。

病院薬剤師への転職を後悔しないようにするためには、事前に病院薬剤師として働くデメリットも確認しておくことが大切です。

この記事では、病院薬剤師として働いている私が、病院薬剤師の年収や業務内容、病院薬剤師として働くメリット・デメリットを解説します。

ドラッグストア、病院など薬剤師の多彩な職場種類について、こちらの記事でまとめていますので併せてご覧ください。

病院薬剤師の最新求人一覧はこちらをご覧ください。

病院薬剤師の年収相場

統計値年収
最高値20,000,000円
最低値2,220,000円
中央値4,519,467円
件数5,642

病院薬剤師の求人案件は5642件あります。

病院薬剤師の最高値は2000万円です。これは全体と比較して+700万円で153.8パーセントです。

一方、病院薬剤師の年収相場は、最低値が222万円です。これは全体と比較して0万円で100パーセントです。

病院薬剤師の中央値は451.9万円です。これは全体と比較して-49.5万円で90.1パーセントです。

参考:全国の薬剤師年収相場(薬剤師の転職.comデータベースより)

最高値13,000,000円
最低値2,220,000円
中央値5,014,198円
件数69,202

病院薬剤師の年収上限額分布

年収(円)求人件数
~3,000,0005
~3,500,00013
~4,000,000110
~4,500,000669
~5,000,0001,735
~5,500,0001,082
~6,000,000781
~6,500,000163
~7,000,000127
~7,500,00013
~8,000,00028
~8,500,0001
~9,000,0002
~9,500,0000
~10,000,0001
10,000,001~1

病院薬剤師の年収下限額分布

年収(円)求人件数
~3,000,000234
~3,500,0001,372
~4,000,0002,407
~4,500,000961
~5,000,000397
~5,500,00064
~6,000,00059
~6,500,00012
~7,000,0005
~7,500,0001
~8,000,0001
~8,500,0000
~9,000,0000
~9,500,0000
~10,000,0000
10,000,001~1

病院薬剤師は調剤薬局やドラッグストアよりも平均年収低い?

病院薬剤師の平均年収は?

病院薬剤師の平均年収は558万円(参照:厚生労働省 第22回医療経済実態調査)です。

正社員の薬剤師の平均年収は約580万円(参照:厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査)であるため、全体の平均より低めの給与水準といえます。

病院薬剤師の年収は、調剤薬局やドラッグストアに比べると初任給の段階から低い水準となっています。

病院薬剤師の初任給は月額20〜25万円程度です。年収にすると300〜350万円となります。

一方、調剤薬局の薬剤師の初任給は月額26〜30万円程度、ドラッグストアだと月額30万円を超えるところも多くなります。

店舗数の多い調剤薬局やドラッグストアでは、若手のうちに管理薬剤師などの役職につくことも多い傾向が見られます。

ドラッグストアでの薬剤師の仕事内容、年収を上げる方法、大手ドラッグストアの年収比較についてはこちらの記事で特集しています。

病院では薬剤師がつける役職の数が限られており、早い段階での大幅な年収アップは期待できないのが現状です。

派遣薬剤師の年収相場、年収を上げる方法についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。

憧れの薬剤師年収1000万円以上求人案件相場はこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。

病院薬剤師の年収が低い理由は?

病院薬剤師の年収が低い理由として、以下の2点が考えられます。

  • 院内薬局の収益が少ない
  • 新卒に人気がある

医薬分業の促進のために薬価の引き下げや処方箋料の引き上げが行われた結果、院外処方の割合が増え、院内処方の利用者が大きく減りました。

令和3年度の医薬分業率は75.3%(参照:日本薬剤師会 医薬分業進捗状況)となっています。

これにより、病院薬局の収入は減り、他の業種に比べて病院で働く薬剤師の年収は低くなりました。

その一方で、薬局や調剤薬局併設型ドラッグストアの需要は高まり、各社が好待遇を提示して人材の確保に尽力しています。

他の業種で働く薬剤師に比べて年収が低い病院薬剤師ですが、医療の最前線で働ける病院薬剤師を志望する新卒の学生は多いです。

病院は新卒の学生を毎年多く採用できるため、中途を募集する必要がありません。

高い給与を出さなくても人材を確保できるため、給与は低めになってしまいます。

国公立と民間で年収はどのくらい違う?

病院は、開設主体によって国公立病院と民間病院の大きく2種類に分けられます。

どちらの病院でも薬剤師の仕事内容はほとんど同じですが、給与水準や待遇面では差があります。

国公立病院

国公立病院の場合、薬剤師は公務員として雇用されるため初任給はどの病院でも月20.8万円、年収にすると約300万円です。

初任給は低いですが、毎年必ず月額6,000〜7,000円ずつ昇給があります。

国公立病院に勤める薬剤師の平均年収は600万円以上と言われており、薬剤師業界の中でも比較的高い水準となっています。

国公立病院に勤める薬剤師は公務員であり、病院の経営状況に収入がされないため、安定性があります。

福利厚生や手当類、残業代なども充実しているため、長く堅実に働きたいという方にぴったりの職場です。

民間病院

民間病院の給料は病院によって異なりますが、初任給は国公立病院と同程度の病院が多いです。

しかしながら、ボーナスが少ない、定期昇給制度がない病院もあり、平均年収は525万円(参照:厚生労働省 第22回医療経済実態調査)と低めの値となっています。

民間病院の場合、主任や部長等の役職につくことで年収を大幅にあげることができますが、役職につかなければ、年収400〜500万円程度が頭打ちと言われています。

役職の数も限られており、必ずしも役職につけるわけではありません。

民間病院は、国公立病院とは異なり、病院の経営状態などによってボーナスがカットされたり、昇給しなかったりということもあります。

病院薬剤師が年収をアップさせる2つの方法

病院薬剤師が年収をアップさせる2つの方法

平均年収が低い病院薬剤師ですが、年収をアップさせる方法もあります。

専門資格を取得する

専門性の高い資格を持っている薬剤師は、希少価値が生まれ、よりよい条件で転職しやすくなります。

転職をしない場合でも、資格手当がもらえることもあります。

代表的な専門資格は、「認定薬剤師」や「専門薬剤師」などです。

これらの資格を取得すると資格者のみができる仕事をすることができるため、キャリアアップにつながりやすくなります。

特にがん領域や感染症領域、緩和領域などの認定薬剤師・専門薬剤師の資格は、病院の業務の中で活かしやすく、年収アップしたい病院薬剤師にオススメの資格です。

病院薬剤師が年収アップするためのおすすめスキルアップ方法をこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。

国公立病院に転職する

先程述べたように、同じ病院薬剤師であっても、長く勤める場合は国公立病院の方が年収が高くなる傾向があります。

国公立病院の薬剤師は、毎年昇給があり、ボーナスや退職金も充実しているため、民間病院に比べてよい条件で働けます。

採用のほとんどが新卒であるため、中途での転職は狭き門ですが、他院で十分にキャリアを積み、スキルアップした上で挑戦してみるというのも1つの選択肢です。

病院薬剤師の主な業務内容

病院薬剤師の主な業務内容

病院薬剤師の主な業務内容は以下の通りです。

  • 調剤業務
  • 服薬指導
  • 点滴・注射薬の調整
  • 薬物治療モニタリング(TDM)
  • 医薬品情報業務(DI業務)
  • 薬品の在庫管理・供給

調剤や服薬指導はもちろん、院内で使う医薬品の管理を行ったり、医師や看護師等他の医療職からの薬についての問い合わせに答えたりと病院薬剤師の業務は多岐に渡ります。

上記以外にも、院内の委員会に参加したり、外来化学療法に携わったりすることもあります。

病院には大きく分けて急性期病院と慢性期病院があり、それぞれ業務内容が異なります。

自分がどちらに向いているのかを転職前にきちんと考えておきましょう。

病院薬剤師として働くメリット

病院薬剤師として働くメリット

他の業種に比べて年収が低い病院薬剤師ですが、病院薬剤師として働くメリットもあります。

  • チーム医療に貢献できる
  • 高い専門性や知識を身につけることができる
  • 患者の回復を傍で見ることができる

医師や看護師をはじめ、様々な職種のスタッフがチームとなり、患者の治療を支えるチーム医療に貢献できることは、病院薬剤師として働く大きなメリットです。

調剤薬局やドラッグストアの勤務では他職種と関わる機会はあまりありません。

また、病院勤務では医師や看護師などと一緒に治療方針について話し合うカンファレンスに薬剤師も参加することがあります。

患者の状況をより深く知ったり、医師の見解を聞いたりして、高い専門性や知識を身につけることができる環境です。

治療にかかわった患者が回復していくのを傍で感じることができることも病院薬剤師としてのやりがいにつながります。

入院から退院まで時間をかけて丁寧にかかわり、患者からの信頼を得て喜びを感じるというケースもあるでしょう。

病院薬剤師として働くデメリット

病院薬剤師として働くデメリット

病院薬剤師として働く前に知っておきたいデメリットもあります。

  • 給与が低い
  • ワークライフバランスが崩れやすい
  • 転職難易度が高い

この記事の前半で述べたように、他の職種に比べて給与が低いのは病院薬剤師として働く1番のデメリットといえるでしょう。

実際に年収に不満を抱えて病院薬剤師を辞める薬剤師も多くいます。

また、入院施設のある病院は夜勤があるケースが多く、ワークライフバランスが崩れやすいです。

家庭を持っている人やプライベートな時間も充実させたいという人には、仕事とプライベートの両立が難しい場合もあります。

病院薬剤師の求人は調剤薬局やドラッグストアの求人に比べると数が少なく、転職難易度が高い傾向にあります。

病院薬剤師の採用は新卒メインであり、中途採用は欠員が出たときのみという病院も多いです。

特にスキルアップ目的で就職を目指す人が多い急性期病院の中途採用はかなり難易度が高いです。

病院薬剤師の求人の中でも、慢性期病院の求人の方が比較的倍率が低い傾向にあります。

未経験から病院薬剤師を目指す場合、まずは慢性期病院でキャリアを積むのがいいかもしれません。

まとめ

この記事では、病院薬剤師の年収や業務内容、病院薬剤師として働くメリット・デメリットを解説してきました。

病院薬剤師の年収は他の職種に比べて低い傾向にありますが、調剤薬局やドラッグストアでは経験できない業務も多く、スキルアップを目指して志望する薬剤師も多い職場です。

一言で病院薬剤師といっても、運営主体の違いや受け入れる患者の違いによって、待遇や業務内容が大きく異なります。

病院薬剤師への転職を成功させるためには事前に情報収集をしっかりと行い、自分の希望に合う病院を見つけることが重要です。

調剤薬局やドラッグストアの求人に比べて病院の求人は数が少ないため、こまめに求人サイトをチェックし、できるだけ多くの情報を集めた上で転職活動を進めるようにしましょう。